私たちは誰しも、自分の考えに従いながら行動しています。
例えば、「今日はどの服を着ようかな」「ランチは何か食べようかな」「この仕事は今やるべきかな」「帰りは何時の電車に乗ろうかな」「夕食はどうしようかな」「好きな番組が始まったけど、どうしようかな」……。
私たちは普段このように、数え切れないほどの選択肢の中から、自分で選んだ決断に従って生活しています。
見方を変えれば、自分で選択して、決断しなければ、主体的に生きていくことは難しいとも言えます。
自分らしく生きていくために、自己決定力は欠かせない大切な力なのです。
とくに、自分の人生を左右するような重要な場面においては、自己決定力の高さがものを言います。
人生における大切な場面では、自分にとってより良い選択をしなければなりません。
後になって後悔するような生き方は、できれば避けたいですから。
そこで今回は、「これからの時代を、自分らしく、しなやかに生きるための4つ目のちから」として、「自己決定力」をあげたいと思います。
自己決定力って何でしょう。
自己決定力とは言葉の通り「自分で決める力」のことですが、心理学的な観点から言えば、「自分の気持ちや価値観を大切にしながら、自分で選び、自分で決める力」ということになります。
どんな場面や状況であっても、まわりの意見に流されることなく、自分の気持ちや価値観に従って「私はこうしたい」と思えることが大切です。
そして、たとえ迷ったとしても、「自分で決めたことだから」と思えることが、心の充足感や安心感につながるのです。
私たちは主体的に、自分らしく生きていくことで、人生を謳歌することができます。
その鍵となる力が、「自己決定力」なのです。
なぜ今、自己決定力が大切なのでしょう。
今も昔も、自己決定力が大切であることに変わりはありません。
しかし、これからの時代を自分らしく生きていくために、自己決定力がますます求められるようになるでしょう。
その理由としては、以下のようなことが考えられます。
①社会が急激に変わっていく、正解が分からない時代を生きていかなければならないからです。
●働き方の多様化
これまでは、正社員になって定年まで勤めることが安定の働き方だと言われてきました。
しかし今は、フリーランスとして働いたり、副業をしたり、リモートワークで働いたりと、様々な働き方が登場しています。
そして、このような傾向は、今後ますます増えてくるでしょう。
→どのような働き方が正解なのか分かりません。
それでも、自分にとってどんな働き方が合っているのか、自分で決めていかなければなりません。
そのときに必要な力が、まさに自己決定力です。
●AIやテクノロジーの進化による職業の変化
今後、ますますAIやテクノロジーが進化していきます。
そんな中、果たして10年後も、今ある仕事が存在しているでしょうか。
また、新たな職業が次々と生まれてくるかもしれません。
→この資格を持っていれば安泰みたいな「正解」は、通用しなくなるかもしれません。
AIなどに仕事を奪われてしまうかもしれないからです。
それでも私たちは、どんな仕事をするのか、自分で選択して決めていかなければなりません。
そのときに必要な力が、まさに自己決定力です。
②自分で選ばないと、後悔につながりやすいからです。
●自分の進路や就職先を、親や先生の言われるままに選んだ場合
「本当は自分で選びたかったんだけど、親や先生に勧められたから」という理由で、高校や大学、就職先などを決めたとしたらどうでしょう。
→最初は「まあいいか」と思っていても、学校生活を送ったり、働き始めたりしてから、自分の中でモヤモヤした感情がふくらんでしまうかもしれません。
それはやがて、「あのとき何故、自分でちゃんと考えて決めなかったんだろう」という後悔に、つながってしまいます。
●友人関係や恋愛関係で、断れずにズルズルいってしまった場合
「本当は気が進まなかったんだけど、空気を壊したくなくて」という理由で飲み会に参加したり、「相手が傷付くのが怖くて」という理由で恋愛関係になったりしたら、どうでしょうか。
→その場はうまくいったとしても、後から、「どうしてあのとき断れなかったんだろう」と自分を責めたり、必要以上に悩んで後悔したりしてしまいます。
自己決定力を高めるためのヒント
自己決定力がいかに大切であるか、これまでの例でお分かりいただけたことと思いますが、それでは、どうすれば自己決定力を高めていくことができるのでしょうか。
例をあげながらお伝えしたいと思います。
①「自分は何が好きなのか」「何を大事にしたいのか」を、つねに問い続けましょう。
●仕事や進路に迷ったときの問いかけ。
「この仕事や勉強は、本当に自分がやりたいことなのかな」「安定よりも、やりがいを大切にしたいのかも」と、自分の心に問いかけることで。
→「私はどんなことにワクワクするんだろう」「どんな仕事や勉強に価値を感じるんだろう」と自分自身に問いかけ続けることで、納得できる選択ができるようになっていきます。
これは、とりもなおさず、自己決定力を高めていくことにつながります。
●人付き合いや休日の過ごし方に迷ったときの問いかけ。
「本当は1人でのんびり過ごしたかったのに、誘われるままに行ってしまった」と、自分の心に問いかけることで。
→「私は誰と一緒にいると、心地よいのかな」「本当は今、友人と遊びたいのかな。家で休みたいのかな」と問い直すことで、他人の期待ではなく、自分の気持ちに軸をおいた行動ができるようになっていきます。
これは、とりもなおさず、自己決定力を高めていくことにつながります。
②どんなに小さな選択でも、自分の意志で選ぶ練習をしましょう。
●レストランでメニューを注文する場面で
いつも、何となく同じものを注文してしまうけど、本当は食べてみたいメニューがあるんだ。
→今日は思い切って、いつもと違うメニューを頼んでみよう。
どんなに小さなことであっても、自分の気持ちに正直に、耳をすませて選択する練習を積み重ねていくことで、自己決定力を高めていくことができます。
●休日の過ごし方を決める場面で
これまでは何となく、家族やパートナーの予定に合わせてばかりで、自分の希望は後回しにしていたね。
→今日は自分の気持ちを大事にして、行きたい場所やしたいことを、自分から提案してみよう。
結果がたとえうまくいかなかったとしても、「自分で選んだ」という経験を積み重ねていくことで、自己決定力を高めていくことができます。
③自分で選んだ結果を受け入れるようにしましょう。
●今日の服選びは失敗したかもと思ったとき。
「今日はこの服で出かけよう」と選んで外出したけど、なんか周りと少し浮いている感じがして、落ち着かないな。
→この服を選んだのは自分だし、今日の経験を次の機会に生かせばいいんだから、これで良かったよ。
このように自分で選んだ結果が思わしくなかったとしても、自分で決めたことを受け入れて次に生かそうとすることで、前向きに自己決定力を高めていくことができます。
●ランチのお店選びで失敗したと思ったとき。
友人とのランチで、今日は自分が決めると張り切って選んだお店だったけど、あまり美味しくなかったし、私ってセンスないな。
→自分で決めたという経験が大事なんだし、次は今日の経験を生かしてお店を選ぼう。
このような小さな後悔を、前向きな学びに変えていく姿勢が、自己決定力の土台となっていきます。
いかがでしたでしょうか。
今回は、「これからの時代を、自分らしくしなやかに生きるための4つ目のちから」として「自己決定力」を取り上げました。
自分の気持ちや価値観を大切にしながら、自分で決めたことを実行していくことで、私たちは自分らしく生きていくことができます。
とは言え、何でもかんでも自分1人で決めなければならないということではありません。
当然ですが、信頼できる人たちと対話しながら決めていくことも、ときには必要です。
そして、自分で決めた結果がたとえ思わしくなかったとしても、必要以上に後悔する必要はありません。
その苦い経験を、次の機会に生かしいけば良いのですから。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、少しでもお役に立てることを願っています。