これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための3つ目の力 ー「他者理解力」ー

生活に役立つ心理学

これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための3つ目の力として今回取り上げるのは、「他者理解力」です。

言うまでもありませんが、私たちは、様々な人たちと関わり合いながら日々の生活を送っています。
そして、自分らしく、しなやかに生きていために、「他者理解力」は、絶対に外せない大切な力です。

ちょっと、想像してみてください。

自分のことをしっかりと理解していて、自己肯定感も仕事のスキルも高く、目標に向かって毎日をエネルギッシュに生きている人がいると仮定します。
まさに理想的な姿と言えますよね。

しかし、もしこの人物に、他者を理解する力が欠けていたら、どうなるでしょう。

おそらく、自分らしく生きていくことは、難しいですよね。

どんなに自分のことを理解していて、仕事のスキルが高く自信満々だったとしても、他者と上手に関わっていくことができなければ、自分らしく生きていくことはできません。

私たちが経験する悩みのほとんどは、他者との関わりに起因していると言われるのは、そのためです。

まして、これからの時代は先を読むことが難しく、どのような選択をすれば正解なのかも、よく分かりません。
さらに、人々の生活様式や考え方や価値観は、ますます多様化してくると思われます。

そんな時代を生きていく私たちには、多種多様な人たちと上手に関わっていく力が、今後ますます求められてくるでしょう。

そこで今回は、これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための3つ目の力として、他者理解力を取り上げます。
最後まで、読んでいただければ幸いです。

他者理解力の大切さと、高めることによるメリット

他者理解力とは言葉の通り、他者を理解する力です。
もう少し詳しく言うと、「相手の考え方や感情や価値観を尊重しようとする力」ということになります。
自分とは違う相手を、否定することなく、そういう人なんだと受け止める力ですね。

では、いま何故、他者理解力が求められているのでしょう。
そして、他者理解力が高まると、どのようなメリットがあるのでしょう。
以下に、具体的な例を通して、説明したいと思います。

①SNSをはじめとして職場や学校などで、多様な人たちと関わらなければならない機会が増えているので、他者理解力が必要になります。

●SNSでのやり取りが増えてくると、様々な意見や価値観に触れる機会が多くなります。
当然、自分とは全く違った意見や価値観を目にすることも、少なくないでしょう。
そんな時、多様な考え方や価値観をただ否定するのではなく、いったんは受け入れてみることも、時には必要です。
それが、他者理解力と言うことになります。

●職場では、年齢や経験や働き方が異なる人たちと一緒に、チームとして働くことになります。
・例えば、20代の新入社員と50代のベテラン社員が、同じプロジェクトで働くとします。
すると、「言葉の使い方」「報告の仕方」「時間の感覚」「パソコンのスキルや使い方」など、ちょっとした感覚の違いから、すれ違いが生じやすくなります。
また今は、リモートやフレックスなど働き方も多様になっているため、顔をつき合わせて仕事をする機会も制限されています。
このような状況でも私たちは、相手のことを理解して仕事を進めていかなければなりません。
そんな時に、他者理解力が必要になります。

●学校では、様々な家庭環境や文化の違う子たちが、同じ教室で学んでいます。
・例えば今の学校では、外国にルーツがある子、発達の特性をもつ子、家族構成が複雑な子など、様々な背景や事情をもった子たちが、昔に比べて多く在籍するようになってきました。
このように学校では、「あの子は変わっている」ではなく、「あの子の事情を想像してみる」ことが求められる場面が増えています。
このような時に、他者理解力が必要になります。

②他者理解力が高いと、相手の考え方や価値観が想像できるので、無用な衝突や誤解を減らすことができます。

ここからは、他者理解力を高めることのメリットになります。

●メールの返信が遅い同僚に対して、以前のようにイライラしなくなった。
・以前は、「なんでいつも、こんなにメールの返信が遅いんだろう。やる気がないのかな」と思っていました。
→実はその同僚は育児中で、苦労しながら業務と家庭を両立させていたことを知った今は、「急ぎじゃないから、空いたときで大丈夫だよ」と配慮できるようになり、関係も良くなりました。
これは、他者理解力が高まったことによってもたらされた例と言えます。

●授業中に黙って立ち歩く子への見方が変わった。
・これまで担任の先生は、「この子は落ち着きがない子」と考えていました。
→実はその子には発達に特性があり、座っていること自体が難しいことが分かりました。
そのことを理解してからは、「今は少し動きたい時間かな」と思えるようになり、注意する回数が減りました。
これも、他者理解力がもたらしたメリットと言えます。

③他者理解力が高いと、人間関係が楽になります。

●友人との予定変更にも、柔軟に対応できるようになった。
・約束をよく直前にキャンセルしてくる友人に対して、不満を感じていました。
→実はその友人は慢性的な体調不良を抱えていて、無理をすると悪化するということを知りました。
友人の背景を理解してからは、「無理をしないで」と声をかけられるようになり、関係を穏やかに保てるようになりました。
これも、他者理解力がもたらしたメリットです。

●子どものかんしゃくに、落ち着いて対応できるようになった。
・息子が毎朝の支度でぐずったり、かんしゃくを起こしたりして、困っていました。
→朝は不安や緊張が高まりやすい時間帯であり、息子はまだ自分の気持ちをうまく言葉にできないということを知りました。
すると、「今日はちょっと不安なのかな」「手伝おうか」と寄り添えるようになり、親自身もイライラが減って、朝の時間がとても楽になりました。
これも、他者理解力が働いた恩恵ということになります。

他者理解力を高めるために、実践したいこと

これまで他者理解力を高めることによるメリットいついて語ってきましたが、それでは、どのようにすれば他者理解力を高めることができるのでしょうか。
ここでは、生活の中で実践できることについて、お話したいと思います。

①相手の「背景」を想像する癖をつけましょう。

●LINEの返信が遅い友人に対して、こんな風に考えてみます。
・「無視されてる?」とネガティブに考える前に、「仕事が立て込んでいるのかも」「返信のタイミングを見ているのかも」「心に余裕がないのかも」と、ポジティブに考えるようにします。
→自分のネガティブな感情に飲み込まれることなく、相手に対する信頼を持ち続けることができるようになります。

●コンビニで無愛想な店員さんに出会ったときに、こんな風に考えてみます。
・「もしかしたら体調が悪いのかもしれない」「忙しすぎて余裕がないのかも」「何か嫌なことがあったのかも」と想像してみます。
→このように考えることで、自分の感情が和らぎ、余計なストレスを抱え込まずに済みます。

②自分と違う考えを聞いたとき、まずは「そうなんだね」と受け止めましょう。

●友人が「休日はずっと家にいて寝ているのが一番の幸せ」と語ったとき。
・「せっかくの休日なのに家にこもっているなんて、もったいない!」と思っても、まずは、「そうなんだね、ゆっくり休むことは大事だよね」と、友人の考えを受け止めるようにします。
→自分の価値観を押し付けずに済むことで、関係を良好に保つことができます。

●友人が「私は結婚しないで1人で自由に生きていきたい」と語ったとき。
・自分は「結婚して家庭を持つことが幸せ」という考えを持っていても、「そうなんだね、自分の人生を大事にしてるって素敵だね」と返します。
→違いを尊重することで、友人も「この人には本音で話せる」と感じ、人間関係が深まっていきます。

③「自分だったらこうする」は、一度、脇に置いておきましょう。

●友人が職場を辞めて、しばらくフリーターを続けながら、やりたいことを探したいと語ったとき。
・「正社員の仕事を辞めるなんてリスクが高すぎる」と思ったとしても、「そうなんだ。ちゃんと自分のやりたいことに向き合おうとしてるんだね」と、まずは受け止めます。
→自分の基準ではなく、相手の立場や気持ちに立って考えることで、信頼関係も深まっていきます。

●友人が「子どもの習い事を週5に増やす」と語ったとき。
・「そんなに詰め込んだら、子どもが疲れちゃうよ」と思ったとしても、「その子にとっては楽しい時間なのかもしれないし、友人も色々と考えて決めたんだろうな」と、まずは受け止めます。
→異なる考えや価値観を尊重する姿勢が、関係を壊さずに健やかに保つことにつながります。

④「ありがとう」「分かるよ」と伝える習慣を身に付けましょう。

●娘がテストで、思うような点が取れなかったとき。
・「頑張ったのに、70点しかとれなかった」と娘が呟いたときに、「頑張ったんだね。悔しい気持ち、分かるよ」と伝えます。
→子どもは自分を否定されずに穏やかな気持ちでいられますし、親子の良好な関係も保たれます。

●仕事で疲れている夫が、夕飯を作ってくれたとき。
「夕ご飯を作ってくれてありがとう。疲れているのに、助かったわ」と、感謝の気持ちを伝えます。
→家族にとって当たり前になりがちな家事に対しても、感謝の言葉をきちんと伝えることで、相手の存在を大切にしていることが伝わり、関係がより温かくなります。

いかがでしたでしょうか。
今回は、これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための3つ目の力として、他者理解力を取り上げました。

他者を理解する力を高めていくことで、人間関係がより深まっていきますし、自分自身の心の安定や幸福感も高まっていきます。

それはとりもなおさず、これからの時代を自分らしくしなやかに生きるための、とても大切な力と言えます。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。