これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための8つ目の力として、今回は「ストレス・コーピング」をとり上げたいと思います。
ストレスコーピングとは、自分がストレスを感じたときに、「どうすれば楽になれるか」「どうやって乗り越えられるか」を考えて、自分を守る行動や考え方を学ぶことを言います。
例えるなら、急に降ってきた雨から自分を守る「傘」のようなものです。
雨(=ストレス)は自分では変えることはできません。
しかし、傘をさしたり、濡れても平気な服に着替えたり、雨宿りしたりすることで、雨で体が濡れてしまうストレスから自分を守ることができます。
私たちは日々様々なストレスを受けながら生活していますが、実は適度なストレスは私たちが生きていくために必要なものです。
ストレスがあるから、私たちは少しずつ、ゆっくりと成長していけるのです。
しかし、ここで問題となるのは、私たちの許容範囲を超えるようなストレスに見舞われた場合です。
そのようなストレスに見舞われたとき、もし適切に対処することができなかった場合、私たちの心はダメージを受けてしまうのです。
そして、それが長期にわたり続いてしまうと、場合によっては様々な心の不調へとつながってしまいます。
ストレスコーピングは、このような許容範囲を超えるようなストレスから自分の身を守るために、とても大切な力であると言えます。
変化が激しく、未来を正確に予測することも困難なこれからの時代を自分らしく生きていく上で、ストレスコーピングは、なくてはならない力なのです。
では、ストレスコーピングにはどのようなものがあるのでしょう。
ここでは、2つのストレスコーピングについてお話します。
問題焦点型ストレスコーピング
問題焦点型ストレスコーピングとは、ストレスの原因そのものを変えようとする対処方法です。
つまり、起こっている問題を整理したり、解決したりすることで、ストレスを軽減しようとする、積極的な対処方法になります。
次のような例が挙げられます。
①仕事や家事の量が多すぎて、ストレスが溜まって疲れてしまったとき
◆やるべき仕事や家事を一度リストアップして、優先順位を決めます。
リストアップすることで、やらなければならないことがはっきりします。
これだけでも効果があります。
そこで、さらに優先順位を付けることで、急を要することから片付けることができます。
こうすることで、精神的な負担が減り、ストレスを軽減することができます。
◆今の状況では実行が難しいものは、後回しにしたり、人に頼ったり、思い切ってやめてしまったりします。
自分だけの力で課題に対処していくことは大切ですが、ときには人に頼ったり、挑戦自体を諦めたりすることが必要な場面もあります。
こうすることで、精神的にも余裕が生まれるので、ストレスの軽減につながります。
②同僚や友人や家族との会話で、誤解が生じたことで気まずくなってしまい、ストレスフルな状態になってしまったとき
◆タイミングを見計らって、気まずくなってしまった相手と話す場を設けます。
早期な関係改善を図るのであれば、やはり相手と直接会って話し合うことが一番です。
自分の思いを冷静に伝えることで、相手の誤解がとけて関係の改善を図ることができます。
こうすることで、ストレスフルな状態を改善することができます。
◆LINEやメールなどで、誤解を招いた部分を丁寧に説明します。
本来は直接会って話をしたり、電話をしたりすることが望ましいと思いますが、お互いに気まずくなってしまうと、ハードルが高いですよね。
そこで、文字で自分の思いを伝えるようにします。
じっくりと言葉を選んで、文字で伝えることで、自分の思いを相手にしっかり届けることができます。
関係改善には時間がかかるかもしれませんが、こうすることで、ストレスフルな心の状態を、少しでも軽くすることができます。
◆共通の知人に相談して、間を取り持ってもらいます。
相手と直接話し合ったり、思いを伝えあったりすることが難しい場合は、共通の知人に間に入ってもらうようにしましょう。
この場合は、信頼して相談できる知人がいることが前提となりますが、こうすることで、自分の思いを冷静に相手に伝えることができ、ストレスフルな心の状態を改善することができます。
いかがでしたでしょうか。
問題焦点型ストレスコーピングの例を2つあげましたが、どちらの例も、状況そのものを変えようとする点がポイントとなります。
これは感情のケアではなく、状況をどう改善するかを考えるときに使えます。
情動焦点型ストレスコーピング
情動焦点型ストレスコーピングとは、ストレスの原因そのものを変えるのではなく、ストレスによって生じた感情(つらさ、不安、後悔、怒り、悲しみなど)を軽くすることを目的とした対処方法です。
これは、ストレスの原因そのものを変えるのが難しいときに使うと、効果があります。
自分の気持ちを整理して、落ち着かせることが中心となります。
一時的にストレスから距離をとったり、ダメージを受けた心を回復させたりするための対処法と言えます。
①楽しみにしていた友人との旅行や、大事なライブ、久し振りのデートなどが、相手の都合でドタキャンになってしまったとき
◆自分の気持ちをノートなどに書き出してみます。
「がっかりしたよ」「楽しみにしていたのに」「ひどいよ」「立ち直れないよ」……。
そのとき頭に浮かんでいる感情を、ノートなどに全て書き出してみましょう。
こうすることで、気持ちを整理することができます。
少し距離をとって気持ちを客観的に眺めることで、ストレスを軽くすることができます。
◆自分の好きなことをして、気持ちをリセットします。
お気に入りの場所に行ったり、夢中になれることをしたりすることで、気落ちをリセットすることができます。
好きなことに集中することで、ネガティブな感情に振り回される時間を少なくすることができるのです。
これは、日常的に使いやすいストレスコーピングですね。
◆信頼できる友人や知人に、話を聞いてもらいましょう。
信頼できる人に話を聞いてもらうことで、心が軽くなります。
人は話を聞いてもらうだけで、気持ちが癒されるものです。
その際は、共感的に話を聞いてくれる相手が望ましいのですが、気心の知れた友人であれば、寄り添ってくれるでしょう。
②ちゃんとやっているつもりなのに、上司や先生から一方的に叱られてしまったとき
◆帰りがてら、「悔しかったな」「頑張っていたのにな」「私は悪くないよ」と、心の中で自分を労ってあげましょう。
傷付いた自分の心に優しい言葉をかけてあげることで、気持ちが穏やかになります。
その際、相手に対して負の感情を抱くことは、あまり良い方法とは言えません。
負の感情を抱くことで、心がますますかき乱されてしまうからです。
◆好きなことをする時間をつくり、気をそらすようにします。
ひとつ前の対処法と同じですが、お気に入りの場所に行ったり、夢中になれることをしたりすることで、気落ちをリセットすることができます。
好きなことに集中することで、ネガティブな感情に振り回される時間を少なくすることができます。
映画やドラマなどを見て意図的に現実から気をそらすことも、同じように有効な方法と言えます。
◆その場で深呼吸をして、「今感じているのは○○だな」と、感情をラベリングします。
その瞬間に感じた感情をラベリングすることで、自分の感情から少し距離をおいて、客観的に眺めることができます。
こうすることで、冷静さを取り戻すことができますし、ネガティブな感情に必要以上に振り回されることが少なくなります。
いかがでしたでしょうか。
情動焦点型ストレスコーピングの例を、2つあげてみました。
どちらの例も、状況そのものを変えるのではなく、自分の気持ちを否定することなく受け止めることで、少しずつ気持ちを和らげていく点がポイントとなります。
正解が分からず、先行き不透明な時代を生きる私たちにとって、ストレスと上手に関わっていく力は、なくてならない必須の力と言えます。
その一つの方法が、今回取り上げましたストレスコーピングです。
ストレスコーピングは、自分らしくしなやかに生きるために、なくてはならない力なのです。
この記事が少しでもお役に立ちましたら幸いです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。