これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための10こ目のちからとして、シリーズ最後となる今回は、マインドフルネスを取り上げます。
マインドフルネスとは、今この瞬間に意識を集中して、思考や感情や身体の状態を評価せずに観察することです。
マインドフルネスは、私の過去のブログにも何度か登場していますが、このシリーズの締めくくりはマインドフルネスにしようと、はじめから決めていました。
私は、それくらいマインドフルネスは大切な力だと考えています。
これまで述べてきた、「自己理解力、自己肯定力、他者理解力、自己決定力、レジリエンス、グリット、アクセプタンス、ストレスコーピング、セルフコンパッション」はどれも大切な力ですが、マインドフルネスはこれら全てを統合する力だと考えています。
私たちは、今この瞬間を生きています。
過去や未来に生きているわけではありません。
仮に過去や未来に囚われ過ぎると、心を病んでしまいます。
今を精いっぱい生きることが、何よりも大切なのです。
それを実現する上で鍵となる力が、マインドフルネスです。
マインドフルネスはとてっも大切な力ですが、実は日々の生活の中で、誰でも実践することができます。
それでは、これから、マインドフルネスを日々の暮らしの中でどのように実践することができるのか考えていきましょう。
日常でできるマインドフルネス実践法
①書くマインドフルネス(ジャーナリング)
私たちの頭の中では、1日じゅう様々な言葉や映像などが、絶え間なく流れ続けています。
「あの人に言われた言葉が気になるな」「やらなきゃいけないことが多すぎるよ」「なんであんな失敗しちゃったのかな」
こんな思考や感情が渦巻いていたら、心は休まる暇がありませんよね。
ジャーナリングは、そんな頭の中のごちゃごちゃを、紙の上に全部出してあげる方法なんです。
特別な準備は不要です。
必要なのは紙とペンだけです。
書くことを通して、自分の頭の中にあるものを、評価せずに、ただ見える形にすることが目的です。
ジャーナリングは数分あればできます。
まずは時間を決めましょう。
3分、5分、10分……無理のない時間で大丈夫です。
テーマは決めなくても大丈夫です。
思いつくままに書いてみましょう。
書くことが浮かばないときは、「今日あったこと」「今の気分」「嬉しかったこと」「悲しかったこと」「辛かったこと」など、入り口となる問いを用意するのも良いですね。
きれいに書く必要も、文法を気にする必要もありません。
書くスピードも気にすることはありません。
とにかく思いつくままに、書き綴っていけば良いのです。
書き終えた文章は、読み返してもいいし、読み返さなくても構いません。
読み返すと自分の思考パターンや気付きが見えてきますし、読み返さなくても心が軽くなること請け合いです。
ジャーナリングをすることで、頭の中が整理されます。
書くことで、「何に悩んでいたのか」「本当に大事なことは何か」と言ったことが、見えやすくなってきます。
また、感情や思考を言葉にすることで、モヤモヤやイライラなどの感情が少し弱まります。
それは、感情が「ただの文字」に変化するからです。
何日か続けていると、「私はこういうときに不安になるんだな」「こういうことがあると元気になるんだな」と、自分自身に対する理解が深まっていきます。
ジャーナリングは、1回数分もあればできます。
必要なのは、紙とペンだけです。
ぜひ。はじめてみませんか。
②セルフ・ナレーション日記
セルフ・ナレーション日記とは、自分自身の物語を語ることです。
自分の感情や思考、身体の感覚まで丁寧に観察し、書き出していきます。
普通の日記と違い、第三者の視点で自分自身を語ることを意識するのが、ポイントとなります。
自分を客観的に見つめることで、気持ちの整理や新たな気付きなどが、得やすくなるのです。
1日の終わりなどに時間をとって、以下にあげるようなポイントについて文章にしてみましょう。
●「今日の考え」→ その日、頭の中で浮かんできたことや気になった思考を、書き出します。
「明日の仕事の準備がきちんとできるかな」「あの人の発言が気になったな」など、頭の中で頻繫に浮かんできたことを書いてみましょう。
頭の中の思考を書き出すことで、思考から少し距離をとって客観的に見ることができますし、気持ちも軽くなります。
●「今日の感情」→ 心の中に湧いていた気持ちを言葉にします。
「不安」「後悔」「嬉しさ」「悲しさ」「モヤモヤ」「怒り」「驚き」「恐れ」など、どんな感情でも良いのです。
浮かんできた感情を全て書き出すことで、感情から少し距離をとって客観的に見ることができますし、気持ちも軽くなります。
●「今日の身体感覚」→ 身体の中で感じたことに意識を向けてみます。
「肩が凝っている」「頭痛がする」「身体がほてっている」「目が疲れている」「お腹がすいている」など。
自分の身体の状態を客観的に見つめることができますし、体調を整えるための行動も喚起しやすくなります。
●「今日、行動したくなったこと」→ 自分自身の思考や感情を受けて、どんな行動がしたくなったかを書き出していきます。
「誰かに話したくなった」「散歩したくなった」「好きな音楽を聴きたい」「美味しい物を食べたい」「早く寝てしまいたい」など。
こうすることで、自分の心の声に気付いて、自分にとって、ためになる行動をすることができます。
これは、自分の心や身体を癒すことにもつながります。
●「今日、思い出したこと」→ ふと思い出した出来事や言葉などを書き出します。
過去の記憶でも最近のことでも、思い出したことを自由に書いていきます。
「高校時代の部活の合宿で、友人と語り合ったときのことを思い出したよ」「上司にありがとうと言われたときは嬉しかったな」「子どもの頃に思い描いていた将来の夢を思い出した」「昨日の会議で発言したことを、何度も思い返すな」「友人と登山して頂上に立ったときは、最高の気分だったな」「先日観た映画の主人公のせりふが、心に残っている」
これは、気付きを得たり、心の支えになったり、自信につながったり、新たなヒントが得られたり、自分の考えを整理したり、自分の価値観を再確認したりと、その効果はとても大きいです。
これら5つは、心と身体と思考のバランスを整えるための視点となります。
感情や思考だけでなく、身体の声や行動の欲求まで含めて自分を客観的に見つめることができるので、より深く自分を理解することができるのです。
セルフ・ナレーションは、ジャーナリングと同じように、評価せずに自由に書きましょう。
きれいな言葉や文章にする必要はありません。
自分のことを少し離れた所から見ている人をイメージしながら書くと、書きやすいでしょう。
翌日以降に読み返すことが、お勧めです。
少し時間を置くことで、新たな気付きが生まれやすくなります。
セルフ・ナレーションを行うことで、以下のような効果が期待できます。
🔷感情や思考が整理されて、心が軽くなります。
🔷自分の行動パターンや気持ちのくせに気付きやすくなります。
🔷身体の声を聞くことで、心身のバランスをとりやすくなります。
🔷自分自身の物語を大切に思うことで、自己肯定感が高まります。
セルフ・ナレーション日記は、自分を見つめる優しい時間です。
忙しい毎日の中で、5つの視点から自分に語りかけるだけで、心が整理されて軽くなります。
まずは1日1回、ゆったりとした癒しの時間を試してみませんか。
③日々の生活の中でのマインドフルな瞬間
マインドフルネスと言うと、座って目を閉じて瞑想するイメージが強いかもしれません。
でも、実は特別な時間や場所がなくても、日々の生活のふとした瞬間に「今ここ」に意識を向けるだけで、十分にマインドフルネスを実践することができるのです。
そして、マインドフルネスを実践しているとき、心はとても穏やかで満ち足りています。
例えば、「コーヒーを味わいながら飲むとき」「食事を味わっているとき」「呼吸を意識しているとき」「食器を洗うときの水の感触を感じているとき」「周りの景色を見ながら散歩をしているとき」「電車を待っている時間」「車を運転しているとき」「空に浮かぶ雲を見ているとき」「森の木々を揺らす風の音に耳を傾けているとき」「鳥や虫の声を聞いているとき」「小川のせせらぎの音に耳を澄ませているとき」……普段は気付かない細かい感覚に意識を向けて、その感覚をじっくりと味わってみましょう。
これらは全て、マインドフルネスを実践している場面だと言えます。
どうでしょう。
想像するだけでも、穏やかな気持ちになってきませんか。
このように、日々の生活の中でマインドフルネスを実践する場面は、意識すればいくらでも作り出すことができるのです。
ですが、日常生活の中にマインドフルな瞬間を作り出すには、コツがいります。
それは、頭の中のお喋りをそっと観察するということです。
マインドフルネスは今この瞬間に意識を向けることです。
ですが、マインドフルネスを実践しようとしても、頭の中を様々な思考や感情が渦巻いていたら、今この瞬間に意識を集中することは難しいですよね。
でも実は、それらの思考や感情を無理に追い出したり、消したりする必要はないのです。
頭の中を絶えず流れる様々な思考や感情を、ただ外から眺めているようなイメージが持てれば、それで良いのです。
「私は今、そんなことを考えているんだな」と観察して、認めるだけで良いのです。
それから、自分の呼吸に意識を向けることができれば、さらに望ましいですね。
頭の中に様々な思考や感情が湧いてきたら、呼吸に意識を向けるのです。
頭の中を流れる思考や感情はそのままにしておき、「息を吸っているな」「息を吐いているな」と自分の呼吸だけに、意識を向けましょう。
すると、心が穏やかになり、満ち足りた気持ちに包まれます。
このように、日常生活の中でマインドフルネスを実践する効果は、計り知れません。
まとめると、以下のような効果が期待できます。
🔷頭の中のごちゃごちゃやざわつきを、静めてくれます。
🔷ストレスや不安が和らぎます。
🔷今この瞬間への感謝や喜びが増します。
いかがでしたでしょうか。
これからの時代を自分らしく、しなやかに生きるための一番大切な力として、マインドフルネスを取り上げました。
マインドフルネスは、何も特別なことではありません。
忙しい日常生活の中で、ちょっと立ち止まって、目の前の「今この瞬間」を感じるだけで良いのです。
それだけで、心が穏やかになり、満ち足りた気持ちになれるのです。
これまで紹介してきた力「自己理解力、自己肯定力、他者理解力、自己決定力、レジリエンス、グリット、アクセプタンス、ストレスコーピング、セルフコンパッション」は、どれもこれからの時代を自分らしくしなやかに生きるために、なくてはならない大切な力です。
そして今回、最後に取り上げたマインドフルネスを身に付けることによって、他の様々な力を生かすことができるのです。
今この瞬間に立ち止まり、自分の心の中と外の世界の両方を優しい眼差しで見つめる時間は、とても貴重です。
そして、この時間を日々の生活の中で積み重ねていくことで、小さな安心感はやがて大きな力へと変わっていきます。
これからの生活の中で、迷いや不安が生じたら、ほんの数秒間でも呼吸に意識を戻してみましょう。
さらに、マインドフルな時間を味わったり、ジャーナリングやセルフナレーションにも取り組んでみましょう。
「今この瞬間」に戻ることは、私たちが私たちらしく歩み続けるための、何よりも確かな一歩なのですから。
これからの時代を自分らしくしなやかに生きるために必要な力として、これまで様々なものを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
何か少しでも心に触れるものがあったのでしたら、とても幸いに思います。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。