レジリエンスとはどんな働きでしょう。
私達は誰もが、悲しい経験や辛い経験をすると、心が傷つき、ダメージを受けてしまいます。
ですが、どんな苦境に立たされても、あまり深いダメージを受けることなく、すぐに立ち直れる人がいます。
まるで、強い力が加わったことでぎゅっと縮まってしまったバネが、再びしなやかに力強く元に戻るように。
このような人達は、総じてレジリエンスが高い人といえます。
レジリエンスとは有斐閣現代心理学辞典には、「脅威となる事態がもたらした心理的な傷つきや落ち込みから立ち直る回復力や弾力性、あるいはその心的過程や結果」とあります。
つまり、レジリエンスとは「しなやかに回復する力」と言えます。
先ほど例にあげましたバネをイメージするといいですね。
辛い経験をして心が傷つきダメージを受けてしまっても、自然と回復する力、即ちレジリエンスが働き、私達は再び元気をとり戻すことができるのです。
もしも、レジリエンスという心の働きがなかったら、私達はどうなってしまうでしょう。
きっと、心がぽきっと折れてしまうのではないでしょうか。
丁度、バネが伸びきってしまって、元に戻らない状態です。
こうなってしまったら、バネは使いものになりません。
心も、このバネと同じです。
折れてしまった心は、簡単には元に戻ることはありません。
一度、ぽきっと折れてしまうと、元に戻るのに時間がかかってしまうのです。
もしくは、元に戻ることさえできなくなってしまうかもしれません。
このようにレジリエンスは、私達が様々な困難や逆境を乗り越えていくうえで、なくてなならない力と言えます。
ここで、レジリエンスというものをイメージしやすいように、バネ以外にも、いくつか例をあげてみたいと思います。
〇大風が吹いても、ぽきっと折れることなく揺れている柳の木。
強い力(大風)が襲ってきても、大きく揺れることで大風によるダメージを軽減している柳の木の柔らかさが、レジリエンスの作用にあたります。
〇相手の強力なパンチを上手にかわしながらダメージを最小限にとどめている、フット
ワークや動体視力が優れているボクサー。
どんなに強いパンチでも当たらなければ、もしくはなるべくパンチをもらわないよう
にすれば、ダメージを少なくすることができます。
このボクサーが備えているフットワークや動体視力は、レジリエンスの作用をしているといえます。
〇猛牛の突進を巧みにかわす闘牛士。
闘牛士は赤い布を巧みに使うことによって、猛牛の突進を上手にかわしています。
もし、まともに闘牛の猛烈な突進を受けたら、それこそ一大事です。
この闘牛士が赤い布を巧みに操りながら猛牛から身をかわす技術は、まさにレジリエンスの作用と言えます。
いかがでしょう。レジリエンスとはどんなものなのか、イメージが持てましたでしょうか。
どんなに強い力(様々なストレス)が襲い掛かってきたとしても、それをまともに受けなければ、もしくは、受けたとしてもダメージを少なくできれば、私達は再び回復して、元気を取り戻すことができるのです。
レジリエンスを高めるにはどうしたらいいですか。
逆境や様々なストレスを受けてもそれを柔軟に受けとめるしなやかさや、元の元気な状態に戻ろうとする回復力、即ちレジリエンスを高めていくためには、私達はどうそればいいのでしょう。
基本的には、レジリエンスという力は、学習しながら身につけていくものだと言えます。
生れつきレジリエンスが高い人もいるとは思いますが、様々な体験をしながら成長していく過程で、人はレジリエンスという力を身につけていくのではないでしょうか。
ここではいくつか、レジリエンスを高めていく方法について考えてみたいと思います。
①信頼できる人に相談してアドバイスをもらう。
自分の力ではどうにもならない困難や逆境に見舞われたとき、信頼できる人に相談することが大切です。
相談することで、自分一人では思い付かなかったようなアイデアや対処法を学ぶことができます。
もらったアドバイスや対処法を、困難が振りかかってきたときに試してみるのです。
もし、その対処法で困難を乗り越えることができれば、小さなダメージで済みますし、速やかに回復することができます。
このプロセスを繰り返していくことで、私達はレジリエンスを高めていくことができます。
②逃げずに問題に対処していく。
生活していれば様々な困難や逆境が訪れますが、もし、その度に慌てふためいたり逃げ回っていたりしたら、どうでしょう。
困難や逆境に立ち向かっていく強さは身に付きませんよね。
そこで、困難な状況が訪れる度に、状況を冷静に分析して、自分なりの解決法や対処法を考えて、それを実行していくのです。
問題が起こる度に、じっくりと自分なりに対処していく経験を積んでいくことで、私達は困難や逆境に立ち向かい、それを乗り越えていくスキルを獲得することができるようになるのです。
レジリエンスを高めることは、一朝一夕にはできません。
困難に出会う度に、それに立ち向かっていく経験を積んでいくことで、簡単には折れない柔軟な心を養っていくことができるのです。
③自己効力感を高めていく。
困難に立ち向かっていくときに、自分にはきっとできるという自己効力感をもつことが大切です。
自己効力感があるから私達は、困難な状況にも立ち向かっていくことができるのです。
これと正反対なのは、無力感です。
頑張っても自分にはどうすることもできないと諦めてしまっていては、しなやかな心を養うことは難しいですよね。
学習性無力感という概念があります。
これはまさに、頑張っても自分にはどうすることもできないという諦めの状態です。
このような状況に陥ってしまうと、目の前の課題や問題を解決していく力は湧いてきません。
当然、レジリエンスは高まっていかないでしょう。
自分にはできると思えることで、困難にも立ち向かっていくことができますし、困難を乗り越えることができれば、さらに自信は深まっていきます。
自己効力感を高めていくことは、レジリエンスを高めていくうえでとても大切なことといえます。
④ビジョンや目標をもつこと。
私達は人生のビジョンや目標をもち、それを達成したいと努力することによって、目の前の困難にも対処するこことができます。
もし、ビジョンや目標がなかったら、どうでしょうか。
流されるままに日々の生活を送ることになってしまいかねません。
このような状態では、困難にぶち当たったときに、立ち向かおうとせずに諦めてしまうのではないでしょうか。
それでは、困難に立ち向かっていくレジリエンスを養っていくことはできません。
ビジョンや目標があるから、私達は困難に立ち向かっていく心の強さを養っていくことができるのです。
⑤ポジティブに考えたり、ポジティブな経験を積んだりしていく。
楽観主義という考え方があります。
楽観主義は、物事をいい方に捉えていく考え方です。
例えば、一見すると良くない出来事と思える事であっても、見方を変えれば考え方が変わり、前向きに行動していけるものです。
何事も悲観主義では、成し遂げることはできません。
ポジティブに捉えていく習慣を身につけていくことによって、何があっても一々思い悩んだり、不安になったりすることなく、前を向いて元気に歩んでいくことができます。
前向きに歩んでいれば、成功体験も自ずと増えていくものです。
小さな成功体験を積み重ねていくことによって、私達はしなやなで強い心を育てることができるのです。
⑥感情や思考を理解する。
困難や逆境に出会ったときに、その時に感じた感情はどんなものなのか、理解するようにします。
こうすることで私達は、感情を理解したり、感情から少し距離を置いたりすることができるようになります。
その際、どんな感情も受け入れていくことが大切です。
喜びの感情、悲しみの感情、苦しみの感情等々。
自分にとって不快な感情や思考であっても、一度は受け入れることが大切です。
つまり自分の弱さとか嫌な部分も受け入れてあげるのです。
レジリエンスを高める方法は他にもたくさんありますが、大切なことは、レジリエンスは高めていくことができるということです。
人生を前向きに希望をもって送るこためにも、レジリエンスは大切な心の働きと言えます。
レジリエンスは一朝一夕には高まっていきませんが、努力すれば、少しずつ高めていくことができます。
今回は私達が前向きに生きていくために、なくてならない力であるレジリエンスについて考えてみました。
それぞれが自分にあったやり方で、レジリエンスを高めていきたいものですね。