他人の言葉に振り回されない方法

生活に役立つ心理学

「知人から言われたちょっとしたひと言が、いつまでも気になって頭から離れない」
こんな経験、ありませんか。
人間であれば、きっと誰もが経験することだと思います。

私たちは日々の生活の中で、他人の言葉に、心を大きく揺さぶられてしまうことがあります。
ときには、その一言で気分が沈んでしまい、行動まで制限されてしまうことさえあります。

人はなぜ、他人の言葉に敏感に反応してしまうのでしょうか。
そして、どうすれば、他人の言葉に必要以上に影響を受けないで済むのでしょうか。

そこで今回は、「他人の言葉に振り回されない方法」について、心理学的な視点から考えてみたいと思います。

人はなぜ、他人の言葉に敏感に反応してしまうのでしょう?

人が他人の言葉に敏感に反応してしまう理由を、心理学的な視点から紹介したいと思います。

①ネガティビティ・バイアスが働いているのかもしれません。
ネガティビティ・バイアスとは、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く反応し、より深く記憶し、影響を受けやすいという心理的な傾向のことです。
つまり、良いことよりも、悪いことの方が心に残りやすいということです。

例えばこんな感じです。
●10回褒められたとしても、たった1回だけ批判されたことが、ずっと気になってしまう。
●仕事で成功した喜びよりも、失敗したときのショックを長く引きずってしまう。
●たくさんの好意的な口コミがある商品でも、たった1つ批判的な口コミを見付けると、購入をためらってしまう。

人には、どうしてこのような傾向があるのでしょう。
実は、ネガティビティ・バイアスは、人間が進化の過程で危険を察知して身を守るために発達した本能だと考えられています。
危険を避けるために、ネガティブな情報に敏感に反応するようになったのです。

そのため、ポジティブな言葉より、ネガティブな言葉の方が心に残りやすいのです。
いつもはポジティブな言葉をかけてくれる人が、たまにネガティブな言葉をかけてくると心がかき乱されてしまうのは、このバイアスのためだと考えられます。

②承認欲求もしれません。
人は誰もが、他人から認められたいという欲求を持っています。
これは、私たちが社会的な動物である以上、とても自然な欲求です。

そのため、職場などで否定的な言葉をかけられると、拒否されたという危機感が呼び起こされてしまい、敏感に反応してしまうのです。
否定されるということは、仲間から排除されるかもしれないという不安に直結しやすいからです。

それに、自分は価値ある存在なのだろうかという自己評価は、他人の言葉に強く影響されやすいとも言えます。
他人から否定的な言葉を受けると、自分には価値がないと思ってしまうことがあるかもしれません。
とくに自己肯定感が揺らいでいるようなときは、相手からの一言が、自分の存在価値を左右してしまうように感じられてしまうものです。

このように、承認欲求の観点からみても、人が他人の言葉に敏感に反応してしまう理由を説明することができます。

③認知の歪みが関係しているのかもしれません。
認知の歪みとは、現実を実際よりも偏った見方で捉えてしまう思考パターンを指します。
他人の言葉に振り回されてしまうとき、この認知の歪みが影響している可能性があります。

以下に、言葉に振り回されてしまうことに関係する認知の歪みを紹介します。
全か無か思考(白黒思考)
物事を「100点か0点」でしか捉えられない思考です。
例:仕事で一度注意されてしまった ➡ 私はダメな人間だ
このように、たった一言で、「自分全体」を否定されたように感じてしまうことです。

過度の一般化
一度の出来事を、いつもそうだ、これからもずっとそうだと拡大解釈してしまう思考です。
例:〇〇さんから今日、頼りないねと言われてしまった ➡ 私はずっと頼りない人間だ
このように、たった1回言われたことを、これからもずっとそうだと感じてしまうことです。

心の読みすぎ
相手が本当はどう思っているのか分からないのに、勝手にネガティブに解釈してしまう思考です。
例:職場の同僚に挨拶したのに、返事が返ってこなかった ➡ 無視された、嫌われているんだ
実際は、相手が気付かなかっただけかもしれません。

レッテル貼り
一部の特徴や出来事をもとに、自分に否定的なラベルを張ってしまうことです。
例:テストで点数が悪かった ➡ 私は頭が悪い、努力しても意味がない
本当は勉強方法を変えたら良いだけかもしれないのに、自分に否定的なレッテルを貼ってしまいます。

肯定的な側面の否定
褒められた言葉を受け取らず、否定的な言葉だけを真に受けてしまうことです。
例:資料、とても分かりやすかったよと、上司に言われた ➡ たまたま運が良かっただけ
このように、自分の努力を認めようとしなかったり、自分の実力ではないと考えてしまったりします。

他人の言葉に振り回されないためにできることは?

①言葉と距離をとりましょう。
ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)では、思考や感情と、自分が一体化してしまっている状態を、フュージョンしていると考えます。

例えば、他人からネガティブな言葉を言われると、「自分はダメな人間だ」というような考えが頭に浮かんでくることがあります。
この時に、その言葉と自分自身がフュージョンしてしまうと、この考えが真実であり、自分自身であるかのように感じてしまうのです。
こうなると、自分は本当にダメな人間だと落ち込んでしまったり、行動が制限されてしまったりします。

このような状況に陥りそうなときに、脱フュージョンの技法が役に立ちます。
脱フュージョンとは、思考や感情を自分自身から切り離し、距離をとって客観的に観察することを言います。
思考や感情を単なる言葉や心のつぶやきとして認識することで、思考や感情に振り回されることなく、冷静に対処できるようになるのです。

要は、他人から何を言われたとしても、それは相手の口から出た単なる言葉であって、私そのものではないと認識することです。

もし、「私はダメな人間だ」という思考が浮かんできたら、「私はダメな人間だと考えているんだな」と言葉にしてみましょう。
すると、その思考から少し距離を置くことができます。

または、「私はダメな人間だ」という思考が浮かんだら、「あ、また『ダメ出しさん』が、何か言っているな」という感じで、自分の思考パターンにユニークな名前を付けて、その思考を客観視するのも良いですね。

②今この瞬間に意識を戻しましょう。(マインドフルネスの実践)
他人の言葉に囚われてしまうと、頭の中が、その言葉で一杯になってしまいます。
すると、「どういう意味だろう?」「嫌われているのかな?」と、ネガティブなことを考え続けてしまうのです。

このような状態に陥ったら、呼吸に意識を向けてみましょう。
息を吸ったり吐いたりする動作を、意識してゆっくりと行うのです。
すると、頭の中のグルグル思考が一時的に停止されて、今この瞬間に意識を戻すことができます。

それから、「悲しい」「不安だ」「頭にくる」といったネガティブな感情を無理に追い払うのではなく、「今、不安を感じている自分がいるんだな」と受け止めるようにします。
すると、自然と気持ちが落ち着いてきます。
これも、今この瞬間に意識を戻す有効な方法です。

③リフレーミングしてみましょう。
リフレーミングとは、物事の見方(フレーム)を変えて、新しい意味付けをすることを言います。
例えばこんな感じに行います。

●仕事でミスをしたとき
仕事でミスをして、上司からダメ出しをされてしまったときに、「自分はダメな人間だ」「完全に信用を失ったよ」と思ってしまったとします。
しかし、リフレーミングを使うと、「次に同じ失敗をしないための経験を積むことができた」「ミスをしながらも、自分は確実に成長している」と、新しい意味付けを行うことができます。

●友人から、空気が読めないねと言われたとき
「空気が読めずに、周りに合わせられない自分はダメな人間だ」と落ち込んでしまったとします。
しかし、リフレーミングを使うと、「私には自分の意見を持っていて、周りに流されない強さがあるんだ」と、新しい意味付けをすることができます。

このように、リフレーミングをする機会は、日常生活の場面でたくさんあります。
他人の言葉に振り回されないために、リフレーミングは効果的な方法と言えます。

④自分の価値に軸を置きましょう。
他人に何かネガティブなことを言われたとしても、それに振り回されるのではなく、自分が大事にしている価値を基準に行動することが大切です。

例えばこんな感じで行います。
●親や周囲から「安定した仕事に就きなさい」と言われたとき
他人基準の受け取り方だと、「言う通りにしないと失敗するかも」と考えてしまいます。
しかし、自分の価値に基づくとらえ方をすると、「私は挑戦することや、やり甲斐を大切にしたいんだ。だから多少リスクがあっても好きな分野に進みたい」と考えることができます。

●友人から、もっと社交的になったほうがいいよと言われたとき
他人基準の受け取り方だと、「私はダメな人間だ、人付き合いが下手なんだ」と考えてしまいます。
しかし、自分の価値に基づくとらえ方をすると、「私は誠実な人間関係を大事にしたいから、少人数でも深くつながっていれば十分なんだ」と考えることができます。

他人から言われた言葉を参考にすることは、ときには必要です。
しかし、最後は自分自身の価値観に基づいて判断することが大切です。
自分自身の価値観に基づいて考えたり行動したりするように心がけていれば、必要以上に他人の言葉に振り回されなくなっていきます。

今日からすぐにできる練習方法があります。

これまで、他人の言葉に振り回されない方法について考えてきましたが、最後に、今日からすぐにできる練習方法について紹介したいと思います。

●1日を振り返って、他人から言われて気になった言葉を、ノートなどに書き出してみましょう。
そして、それに対して、自分はどのようにとらえたのかも書き込んでみましょう。
こうすることで、自分の感情を素直に受け止めることができます。

●他人からネガティブなことを言われてしまったら、「私は今のままで大丈夫。自信をもっていこう」と、自分に優しい言葉をかけてあげましょう。
こうすることで、自分が大事にしている価値を確認し、自信を取り戻すことができます。

●言われて嫌だった言葉をオウム返しに口に出して、「これはただの言葉だ」と感じてみましょう。
こうすることで、自分をネガティブな言葉から切り離して、距離を置くことができます。

いかがでしたでしょうか。
今回は、「他人の言葉に振り回されない方法」について考えてみました。
他人の言葉に揺さぶられてしまうのは、人間としてとても自然なことです。

しかし、心理学的な視点を取り入れることで、言葉をただの言葉として受け止め、自分の価値観に基づいて生きていくことができます。

次にもし、誰かの言葉で気分が滅入ってしまったときは、今回紹介した方法を一つでも試してみてください。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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