「学習性無力感」とは、どんなに努力しても結果が伴わないことを繰り返し学習したことで、何をしても無駄だと諦めてしまった心理状態をいいます。
1967年にアメリカの心理学者マーチン・セリグマン博士が発表しました。
自身のことを振り返ってみると、このような状態になりかけたことは何回かありました。
中でも強烈に印象に残っているのは、教員時代のある出来事です。
もう20年以上前のことになります。
受け持ったクラスで、立て続けに、いじめや細々とした事件が起こったのです。
私も精一杯、問題の解決に向けて努力したのですが、手を打てば打つほど、ずるずると泥沼にはまってしまい、最後は諦めて燃え尽きたような状態になってしまいました。
私はその後、約半年間休職しました。
幸い、その後はまた職場に戻ることができました。
今思えば、この時はまさに、学習性無力感に陥った状態だったと思います。
私の場合はまだ早めに対処できたので幸いでしたが、長引くとうつ病などの精神疾患に発展してしまいかねません。
そうなってしまったら、それこそ回復までに大変な時間がかかってしまいます。
では、そのような状態に陥らないためには、どうすれば良いのでしょう。
私の経験から言えることは次の2点です。
①燃え尽きたような状態になりかけたら、その強烈なストレスフルな状況から身を引く。
私の場合は休職という形を取りましたが、これが良かったです。
強烈なストレスがかかる場所から、一時的であっても離れることが大切です。
心が疲れている状態ですから、まずは心の平安を取り戻すことが先決です。
とは言っても、なかなかその場所から離れることは難しいかもしれません。
そのような場合は、できる範囲で休暇をとったり、家では心が休まりリラックスできることを優先に行ったりすることが、とても大切です。
いずれにても、疲れている心を休ませてあげることが、一番大切です。
②自分の考え方(認知)を変えたり、信頼できる人に相談したりする。
いくら努力しても結果が伴わないのは、本当に辛いものです。
結果が出ないと、ネガティブで後ろ向きなことばかり考えてしまいます。
そうなると、頭の中は負の思考や感情でいっぱいいっぱいになってしまいます。
そして、自分には到底できないと諦めてしまい、最後には心が燃え尽きたような状態に陥ってしまいます。
そうなる前に、自分は学習性無力感の状態になりかけていると、気付くことが大切です。
気付きことができたら、自身の考え方(認知)を変えるようにしましょう。
認知の変え方としては、以下のような手順で行うことができます。
「完璧にやり遂げないと駄目なんだ」→「70点くらいのできでもいいんじゃないかな」
「この失敗は致命的だ。もうお終いだ」→「この失敗で全てが終わるわけではない。失敗は次に生かせばいいんだ」
「私は何をやってもうまくいかない。無能な人間だ」→「私にはいいところもある。無能なんかじゃない。こんな強みがあるじゃないか」
「こんなことが起こるなんて、最悪だ。自分にはもういいことなんで起きないんだ」→「そんなことはない。今回はたまたまこんな結果になったけど、そのうちいいことだってあるはずだ」
「もう方法がない。絶望だ」→「他にも、いろいろな方法があるはずだ。やってみよう」
このように自身の認知を変えていく際に、紙に書いたりスマホにメモしたりすることがポイントです。
紙などに書いて目の前に置くことで、思考から少し距離をとって俯瞰して見ることができます。
実際に認知を変えていくには、生活の中で練習していく必要があります。
時間はかかるかもしれませんが、焦らず一つひとつ実践するように心がけていくことが大切です。
とは言ったものの、自分一人の力では限界があるかもしれません。
そんな時は、身近にいる信頼できる方に、話を聞いてもらえるといいですね。
そうすれば、自分では考えつかなかったようなアドバイスをもらえるかもしれません。
誰かに相談するのにも勇気が要りますが、自分の心を守るためです。
相談されれば、きっと力になってくれる人はいるはずです。
大型連休も終わって、5月も中旬に入ります。
新年度になり、新たな職場や学校でスタートを切った方もたくさんいらっしゃると思います。
4月の1ヶ月間は、新しい環境や仕事、人間関係に慣れようと、知らず知らずのうちに精神的に相当無理をしてしまっているものです。
連休で心身共にリフレッシュできた人はまだ幸せです。
中には連休中も仕事をしていた方も、いらっしゃるでしょう。
ここで無理をしてしまうと、学習性無力感のような状態に陥ってしまうことも、十分に考えられます。
そうならないためにも、適切な休息をとったり、自身の認知(考え方)の傾向性を振り返って時には認知を修正したり、信頼できる人に相談したりするなどの対処を試みることが大切になります。