「人間関係リセット症候群」とは?

生活に役立つ心理学

皆さんは、「人間関係リセット症候群」という用語を、ご存じですか。
私は最近になって、初めてこの用語を知りました。
これは、今ある人間関係を衝動的に断ち切ってしまいたいという心の状態を表す造語です。
2年前にSNS上で登場しました。

具体的には、SNSで繋がった人間関係を簡単に解除してしまう人達をイメージすると、分かりやすいかなと思います。
それが敷衍して、友人や知り合いの連絡先を消去してしまったり、転職を繰り返してしまったり、突然蒸発してしまったりするような人達も指すようになりました。

しかし、このような人達は、前々から一定数存在していました。
決して、今に始まったことではありません。
では、なぜ今になって、このような事が言われはじめたのでしょう。

それにはやはり、SNSの特性が大きく関与してしていると考えられます。
SNSは不特定多数の人達と交流したり、膨大な情報に瞬時にアクセスしたりすることができる、大変便利なものです。
今は、使っていない人を探すほうが難しいくらいに、様々なSNSが普及していますよね。

しかし、簡単に繋がれるということは、裏を返せば簡単に関係を切ることもできるということです。
人間関係を簡単にリセットできるSNSの手軽さから、嫌になったらリアルな人間関係もリセットしてしまえばいいという発想に繋がったのではないでしょうか。

しかし、そんなに簡単に、リアルな人間関係をリセットしてしまっても良いのでしょうか。 
 
人はそもそも、社会的な生き物です。
私達は大勢の人達と関わりあいながら、生きています。
すると当然のことですが、人間関係がうまくいかなくなることもあります。
そこで関係が改善されればいいのですが、残念ながら関係が改善されずに、最悪の関係に発展してしまうこともあります。
そして最悪の関係を迎えてしまったときに、最後の手段として人間関係をリセットしようとするのは、ある意味自分の心を守ろうとする本能かもしれません。
無理をし過ぎて心を壊してしまったら、それこそもっと苦しむことになりますから。 

例えば、辛辣ないじめを受けていた子が、不登校になっとします。
これは学校での人間関係をリセットして、自分の心を守ろうとする姿だと言えます。

ひどいハラスメントを受けていた人が、耐えられなくなって会社を辞めたとします。
これも自らの心を守る行動と言えるでしょう。

場合によっては家族関係をリセットする人もいるでしょう。
これも自分の心を守るために、やむを得ない時もあります。

振り返ってみたら私にも、そのようなことを考えたときがありました。 
仕事上での人間関係があまりにも辛くて精神的に追い詰められたときに、誰も知らない場所へ行ってしまいたいという妄想に駆られてしまったことがあったのです。
今思えばこれは、自分の心を必死に守ろうとしていた姿だったと思います。
しかし私は、現実の世界で人間関係をリセットすることはありませんでした。 
私の場合は幸い、信頼できる人達の助けを借りながら、何とか乗り越えることができたからです。 
 
人間関係をリセットしていいのは、手の打ちようがない状況まで追い込まれた時だと、私は考えています。

人間関係がちょっとうまくいかなくなったからといって簡単に諦めてしまうのでは、あまりにも短絡的すぎます。
それでは、自らの成長の可能性を摘んでしまっていると、言わざるを得ません。

私達は誰もが、多かれ少なかれ、人と関わりあいながら生きていきます。
様々な人達と関わっていくことで、より良い関わり方を学び、豊かな人生を歩んでいくことができるのです。

時には人間関係が辛くなることもあります。
でもそこで、簡単に人間関係をリセットしていたのでは、本当の意味で満足する人生を歩むことは難しいのではないでしょうか。  
人間は本来、関わり合いの中で生きていく社会的な存在なのですから。

もし、人間関係をリセットしたくなったら、ちょっと立ち止まり、まだできることはないかなと考えてみる。
そして、これならできそうだという考えが浮かんだら、それを試してみる。
私達の人生は、この繰り返しではないでしょうか。
リセットしてしまった関係は、もう元には戻れません。
だからこそ、今目の前にある関係を大切にしながら生きていきたいなと、私はあらためて感じました。