見ることのマインドフルネス

生活に役立つ心理学

マインドフルネスという言葉を、皆さんは一度は耳にしたことがあると思います。
では、マインドフルネスとは一体、どういったものなのでしょうか。
マインドフルネスと聞くと、仏教や瞑想やヨガを連想する方が多いと思います。
実際、マインドフルネスという言葉は、仏教用語を英訳したものです。
それを現在のように広めたのは、ジョン・カバット・ジン博士と言われています。
博士は、マインドフルネスを「瞬間瞬間の判断を入れない気づき」有斐閣現代心理学辞典p718 と定義しました。

私はACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)を学んでいますが、ACTでは「今この瞬間への柔軟な気づき」を大切にしています。
これはまさに、マインドフルネスそのものと言えます。
ACTに関するブログは以前にも何本か書いていますが、今回から数回にわたって、マインドフルネスを私達の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)と関連付けて、まとめたいと思います。
1回目の今回は、視覚(見ること)のマインドフルネスについて考えてみます。

見ることのマインドフルネスとは

「見ることのマインドフルネス」とは、見ること(視覚)を通じて、今この瞬間に意識を集中させる実践法と言えます。
具体的には、今、目の前にあるものに意識を集中して、注意深く見たり、観察したりします。
その際、ポイントとなることがあります。

①意識して注意深く見ます。
ただ見るだけでなく、細かい部分まで意識して、注意深く見るようにします。
形や色などを、ありのままに感じ取ります。
例えば、道端に咲いている小さな花を見るときに、花の色や形などに注意を傾けるようにします。
花の美しさや可憐さ、儚さなども感じ取れると素敵ですよね。

②評価をしません。
見るときに、良いとか悪いとか、優れているとか劣っているとかの、評価をしないようにします。
評価をすることなく、ただそのままを受け入れるようにします。
このようにマインドフルに見ることによって、穏やかな気持ちになり、ストレスも軽くなると言われています。

③今この瞬間に集中して見ます。
私達は何かを見ているときでも、ややもすると、過去の出来事や未来のことを無意識のうちに考えていることがあります。
このような状態で見ていたら、目の前にあるものを集中して見ることはできません。
ただ漫然と見ているだけになってしまいます。
それは、とても勿体ないことですよね。
ですから、目の前のものに意識を集中させて、無心な状態で見るようにしたいものです。
今この瞬間に集中して見ることで、心がすっきりしますし、集中力も高まります。

見ることのマインドフルネスの日常生活での実践例

それでは具体的に、日々の生活の中で、「見ることのマインドフルネス」をどのように実践すればよいのでしょうか。
いくつかの場面に分けて、具体的に紹介したいと思います。

①自然や風景を観察します。
・散歩をしながら、木々や道端に咲いている花を、じっくりと観察します。
・小川の流れを見つめます。
・雨や雪の形や動きを見つめます。
・空を見上げて、空の色や雲の形を観察します。
・建物や看板などに意識を集中させて、その色や形を観察します。
・行きかう人達の表情や動きを観察しながら歩きます。

②食事の際に、食べ物や飲み物を観察します。
・食事をするときに、食べ物の形や色をじっくりと見ながら、ゆっくりと味わいます。
・コーヒー、紅茶、緑茶、ミルク、ビールなどの飲み物の色をじっくりと観察しながら、味わって飲みます。

③自宅で過ごしながら観察します。
・部屋にある家具、装飾品、本、植物、壁や敷物など目に入るあらゆる物の色や形を、じっくりと細部まで観察します。
・窓から見える景色を、じっくりと観察します。

④絵画などをじっくり鑑賞します。
・美術館などで絵画を鑑賞するときは、目の前の絵画を細部にわたるまでじっくりと観察しながら、鑑賞します。

このように、日常生活の中で「見ることのマインドフルネス」を実践する場面は、工夫次第でいくらでも見付けることができます。
大切なことは、自分に合った「見ることのマインドフルネス」を見付けて、実践することです。
「見ることのマインドフルネス」を実践することによって、心が安定して穏やかになったり、ストレスが軽減されたりする効果が期待できます。

現在の社会には、テレビやスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器があふれていて、それらのデジタル機器を見る時間も長くなりがちです。
これは致し方ないことではありますが、できれば1日の中で、このようなデジタル機器の画面を見ない時間を、少しでもつくりたいものです。
いわゆる、デジタルデトックスですね。
スマートフォンなどのデジタル機器からはブルーライトなどの光が出ていますので、見過ぎると、目が疲れたり、睡眠障害を引き起こしたりしてしまいます。
これらのデジタル機器を見ない時間をつくることで、目や脳の疲れを緩和することができます。
そして、その代わりに、これまで紹介してきた「見ることのマインドフルネス」を実践することは、とても意味があり、効果があることだと考えられます。

今回はマインドフルネスを、見ることの視点から考えてみました。
皆さんもぜひ、日々の生活の中で、「見ることのマインドフルネス」を実践されてみてはいかかでしょうか。