五感の中でも聴覚は、視覚についで使われることが多い感覚器官です。
私は音楽が大好きで、クラシックギターを演奏することが趣味ですが、私にとって「聴く」ことはとても重要な意味をもっています。
きっと、皆さんにとっても、「聴く」ことには重要な意味が込められていると思います。
そこで、前回は「見ることのマインドフルネス」について考えてみましたが、今回は「聴くことのマインドフルネス」について考えてみたいと思います。
聴くことのマインドフルネスとは
前回のブログでマインドフルネスとは「瞬間瞬間の判断を入れない気づき」有斐閣現代心理学辞典
p718 と述べました。
これを、今回考える「聴くことのマインドフルネス」に当てはめてみると、「瞬間瞬間の判断を入れないで聴くこと」と言えます。
あるいは、「今、この瞬間に聴こえる音に集中する」と言っても良いでしょう。
つまり「聴くことのマインドフルネス」とは、聴くこと(聴覚)を通じて、今この瞬間に意識を集中させる実践法と言えます。
具体的には、今この瞬間に聴こえてくる音に意識を集中して、注意深く聴く実践法ということになります。
その際、ポイントとなることがあります。
①意識して注意深く聴きます。
聴こえてくる音をただ漠然と聴くのではなく、小さな音も聞き逃さないように、意識を集中して注意深く聴きます。
聴こえてくる音を、ありのままに感じ取るようにします。
その際、心地よい音だなとか、悲しい音だなとか、感じたことをありのままに受け入れるようにしたいですね。
ここで少し視点を広げてみましょう。
聴こえてくる音に人の声も含めると、どうなるでしょうか。
話を聴くという行為は、相手がいたり、お互いが能動的に関わったりするという意味で、聴こえてくる音とは少しニュアンスが違うかもしれませんが、ここでは広く捉えたいと思います。
先ほどと同じように考えると、聴こえてくる声に意識を集中して、ただありのままに注意深く聴くということになりますね。
このような話の聞き方を心がけていたら、どうなるでしょう。
きっと、話を真剣に聴いてもらえたと感じるでしょうし、お互いの関係がより温かいものになりますよね。
②評価をしません。
聴こえてくる音に対して、良いとか悪いとか、優れているとか劣っているとか、評価をしないで聴くようにします。
評価をせずに、聴こえてくる音を、ただそのままに受け入れるようにします。
このようにマインドフルに聴くことによって、穏やかな気持ちになり、心理的なストレスも軽減されます。
これを、聴こえてくる人の声も含めて考えると、人の話を評価をしないで聴くということになります。
もし、相手の話を評価をせずに、ただありのままに聴くことができたとしたら、どうでしょうか。
このような聴き方ができると、相手は共感してもらえたと思うでしょうし、安心して話すことができるのではないでしょうか。
このような話の聴き方を続けていれば、きっと、お互いの関係がより温かいものになりますよね。
③今この瞬間に集中して聴きます。
私達は音を聴いたり、誰かと話したりしているときでも、ややもすると、過去の出来事や未来のことを無意識に考えたり、注意が逸れたりしていることがあります。
このような状態で聴いていたら、今この瞬間に聴こえてくる音や声に、意識を集中させることができません。
とくに、誰かと話しているときにこのような状態になってしまうと、話をちゃんと聞いてもらえなかった思い、関係が悪くなってしまうことも考えられます。
このように「今この瞬間に聴こえる音や声に、意識を集中させる」マインドフルリスニングを実践することで、心理的なストレスが軽減されたり、集中して聴く力が高まったり、人間関係がより良くなったりする効果が期待できるのです。
聴くことのマインドフルネスの、日常生活での実践例
それでは具体的には日々の生活の中で、「聴くことのマインドフルネス」をどのように実践していけばよいのでしょうか。
①自然の音に耳を傾けます。
・森や林の中を歩くときに、聴こえてくる鳥や虫の声、木々が揺れる音、風の音などを、耳を傾けてありのままに注意深く聴きます。
・小川が流れる音に耳を傾け、ありのままに注意深く聴きます。
・雨の音に耳を傾けて、ありのままに注意深く聴きます。
②生活の中で聴こえる音に耳を傾けます。
・外を歩きながら聴こえてくる、車やバイクや自転車の音、横断歩道の音、人が歩く靴音や話し声、飛行機の音などに耳を傾けて、ありのままに注意深く聴きます。
・ショッピングモールなどで買い物をするときに聴こえてくる、大勢の人の声や歩く音、子供たちの笑い声、お店から聴こえてくる音楽などに耳を傾けて、ありのままに注意深く聴きます。
・家で過ごしているときに聴こえてくる、食器を洗う音、お風呂やシャワーの音、洗濯機の音、手や顔を洗う音、歯を磨いている音、鍋やフライパンなどで調理をする音、天ぷらを揚げる音、電子レンジで調理している音、玄関のチャイムの音、電話やスマートフォンの音、目覚まし時計の音、時計の秒針が動く音、食事をするときの音などに耳を傾けて、ありのままに注意深く聴きます。
③マインドフルに音楽を聴いたり、演奏したりします。
・好きな音楽を、ありのままに注意深く聴くようにします。
演奏されている楽器に意識を集中して聴いたり、歌詞に意識を集中させて聴いたり、メロディーやリズムを感じながら聴いたりします。
好きな音楽をゆったりとした気分で注意深く聴くことで、ストレスが軽減されたり、気持ちや感情が整理されたり、癒されたりする効果が期待できます。
・好きな楽器を、集中して演奏します。
私はクラシックギターを弾いていますが、演奏するときはいつも、意識を演奏に集中して、無心になって演奏するようにしています。
演奏が終わると、いつも心地よい気持ちになり、ストレスなども軽くなっていることを実感することができます。
④聴きながら学習します。
・いわゆる耳学と呼ばれるものです。
これもやはり、今に意識を集中させて注意深く聴くということになります。
私の場合は、通勤の時間を耳学に充てています。
とは言ったものの、ずっと意識を集中させることは難しく、時々雑念が浮かんでしまうこともありますが、長年この習慣を続けてきた成果は、しっかりと実感しています。
耳学をあまり好まない方もいるかもしれませんが、耳学は隙間時間を有効に使うことができる優れた学習法と言えます。
しっかりと集中して聴くことで、理解力も高まっていきます。
いかがでしたでしょうか。
今回はマインドフルネスを、聴くことの視点から考えてみました。
皆さんもぜひ、日々の生活の中で、「聴くことのマインドフルネス」を実践されてみてはいかがでしょうか。
きっと、思いもかけなかったような効果を実感することができると思います。