触れることのマインドフルネス

生活に役立つ心理学

「見ることのマインドフルネス」「聴くことのマインドフルネス」と2回にわたって述べてきましたが、今回は「触れることのマインドフルネス」をとりあげてみたいと思います。

触れることのマインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「瞬間瞬間の判断を入れない気づき」有斐閣現代心理学辞典P718 を意味しています。
これを、今回とり上げる「触れることのマインドフルネス」に当てはめてみると、「瞬間瞬間の判断を入れないで触れること」と言うことができます。
あるいは、「今、この瞬間に触れているものに意識を集中すること」と言うこともできます。
つまり「触れることのマインドフルネス」とは、触れること(触覚)を通じて、今この瞬間に意識を集中させる実践法と言えます。
その際、ポイントになることがいくつかあります。

①意識して注意深く触れます。
何かに触れているときに、ただ漠然と触れているのではなく、触れているものの感触を味わうように、意識を集中して注意深く触れるようにします。
その際、つるつるしているなとか、ざらざらしているなとか、べたべたしているなとか、柔らかいなとか、固いなとか、感じたままをありのままに受け入れるようにします。
その感触が心地よい場合も、そうでない場合も、ただありのままに感じるようにします。

②評価をしません。
触れているものや、その感触に対して、良いとか悪いとか、優れているとか劣っているとか、評価をしないで触れるようにします。
評価をせずに、触れている感触を、ただそのままに受け入れるようにします。

③今この瞬間に集中して触れるようにします。
私達は何かに触れているときでも、ややもすると、過去の出来事や未来のことを無意識に考えたり、注意が逸れたりしていることがあります。
このような状態で触れていたら、今この瞬間に感じられる感触に、意識を集中させることができません。
これは、とても勿体ないことです。
そこで、何かに触れているときは、今この瞬間に触れているものに意識を集中させて、触れている感触に身をゆだねることが大切になります。

このように、「今この瞬間に触れているものに意識を集中させる」方法を実践することで、心理的なストレスが軽減されたり、幸福感が増したりすることが、期待できます。

触れることのマインドフルネスの、日常生活での実践例

それでは具体的には日々の生活の中で、「触れることのマインドフルネス」をどのように実践していけばよいのでしょうか。

①家の中でできる実践例。
・ありのままに注意深く、流れる水に触れて、水の感触を手で味わいながら、食器を洗うようにします。
・お湯の感触を体全体で感じながら、シャワーを浴びたり、湯船に浸かったりします。
・顔に触れる水の感触を感じながら、洗顔します。
・手や体全体でペットの温かさや柔らかさを感じながら優しく抱っこすることで、幸福感に満たされます。
・衣服が肌に触れる感触を味わいながら、服を着るようにします。
・お気に入りのぬいぐるみを抱いて、その感触に身をゆだねます。
・ベッドや布団や枕の感触を味わいながら、眠りにつくようにします。
・赤ちゃんを抱っこする感触は言うまでもなく心地よいもので、幸福感に満たされます。
・手に触れる紙の質感を感じながら、本を読むようにします。
・指に触れているペンの感触を感じながら、文字や絵を書いてみます。
・木や釘やのこぎりの感触を感じながら、ディーアイワイに取り組んでみます。
・木材や弦の感触を感じながら、ギターを弾いてみます。
・身の回りにある、普段あまり触れることのない様々な物に、意識を集中させながら触ってみます。

②外や自然の中でできる実践例。
・靴や地面の感触を感じながら、歩きます。
・ハンドルの感触を感じながら、車やバイクや自転車を運転します。
・電車のつり革を握る感触に、意識を集中させてみます。
・庭や道端に咲いている小さな花にそっと触れて、その感触を味わってみます。
・庭や道端や林にある木に触れて、その感触に身をゆだねてみます。
・森を流れる小川に手を入れて、流れる水の感触に身をゆだねてみます。

いかがでしたでしょうか。
今回はマインドフルネスを、手や皮膚で触れることの視点から考えてみました。
触れるものにもよりますが、触れることがストレスの軽減や幸福感を高めることは、きっと誰もが経験的に感じていることではないでしょうか。
皆さんもぜひ、日々の生活の中で、「触れることのマインドフルネス」を実践されてみてはいかがでしょうか。
きっと、思いもよらなかったような効果を実感することができると思います。